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その人のもとで仕事をするスタッフが、きまって辞めていく監督がいる。監督自身があまりに夜遅くまで映像を見返すものだから、分析担当など部下が帰られず、休めない。期日までに「分析結果を出せ」と命じられ、苦労して出すのだけれども、監督が「OK」というもの以外はダメ出しされる。意見を求められ、意と異なる内容だと「お前は味方じゃないのか」となじられる。ともに過ごす時間が長くなるスタッフはこれが続くと、耐えられず、壊れてしまう。
でももちろん、有形無形の圧力に頼ることなく物事を動かそうとする監督もいる。例えばミーティングでボールのつなぎ方をこう教える。「このエリアに相手は4人、うちは3人。すると空くのはここだ。そこへボールを運びたい。それには一人ひとりがどうポジショニングを取ればいい?」。
選手がこう動けば、ピッチでこういう変化が起こると、順序立てて導いていく。DFへの動き方の指示でもそう。「そこに立つのでは後方に空間ができて、FWに突かれる。君がもう2メートル下に位置取れば(穴もできず)、味方SBもカバーしなくて済むんだ」。僕でも飲み込みやすい。
足でやる競技だし、実際には指示そのままに事が運ばないときもある。でも、「つなげ!」「守れ!」と連呼されるよりはよほどいい。それだと、どうつなぐのか、守るのか、分からないし。勝負は最後には「頑張り」で決まりもするし、戦う姿勢は競技の根本として大事なのだけれど、そこに訴える前にきちんとしたものを指導する側が持ち合わせていないと、人はついてこないのだろうね。
今は選手も博識で、問いかけへの答えを監督が示せないと「この監督は何もない」と見切られてしまう。特に日本人は指導者に「答え」を求めがちだから、監督も大変だ。でもサッカーの本質は、上からの答えだけにあるわけじゃないよ。
野球で打者が打った後、一塁にも三塁にも走っていい。例えればサッカーにはそんなところがある。こっちに動き、あっちにいってもいい。自分による判断の連続だ。監督からの指示待ち、「答え待ち」ではやり通せない。
行動が嫌がらせにあたるかどうかは、された側の受け止め方、互いの信頼関係次第と聞く。銀座のお姉さんによれば、許されるかどうかは「誰に言われたかによります」らしい。判断が難しいよ。「まだ結婚していないの」と僕が声を掛けたら? ……アウト!