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横浜FCは創設20周年を迎えた今季、J2を3位で終えて昇格をかけたプレーオフに進んでいる。僕はもう13年余り、ここで歴史をともに歩んできてもいる。
この20年でクラブとして何を積み上げてこられただろう。年ごとに好調、停滞と浮き沈みは激しく、1年間の成果や積み上げも、主軸選手が去るとともに消えてしまいかねぬほどはかなく思える。そんなクラブはうちだけでもないだろう。
でも、クラブは浮き沈みを繰り返して大きくなっていく。大分トリニータはこの6年間でJ1-J2-J3を行き来し、再びJ1へ返り咲いた。その道のりの起伏の大きさは、歴史の豊かさでもあるよね。鹿島アントラーズのように常に強いのも立派な歴史だけど、それとは違った幅や底力があるというか。誰も挫折はしたくない。停滞や降格なんてないのがいいに決まっている。でも、したくはない経験も1つの財産なんだ。失敗や悲哀も人の自分史に深みを添えていくように。
クラブが催すイベント1つをみれば、そこが一流か三流なのか分かる。段取り、手際、人はてきぱき動いているか。なれ合いでない距離感が保てているか。細部すべてにそのクラブなるものが現れる。クラブ一人ひとりの意識のありようがそのクラブを物語るわけだ。その目でみれば横浜FCはまだ一流と距離はあるかもしれない。
いいサッカー、面白いサッカーを与える「いいクラブ」でありたい。じゃあ面白いサッカーって何か。高い技術や戦術といったスペックだとは限らない。それらを越え、素人も玄人も熱くさせる、パッションや熱が伝わるものがいい。横浜FCの終盤戦は大入りの試合が続き、つられるように試合の内容も見違えるほど良くなった。これもクラブに関わるみんなで生み出せた「熱」だろうね。
昇格をかけた一歩も引けぬ争いの場に立てている事実は、若手、コーチ、横浜FCの次なる財産になっていく。でも、その場に立っただけでは駄目だとじきに気づく。トーナメントの決勝まで進んで、敗れてみて初めて、目指した憧れの場に立つだけでは駄目だと感じられるのと同じなんだ。
現ルールではJ2で3位になっても、4位以下にJ1行き切符が渡りうる。だから20年目を迎えての3位は、まだ何ものでもない3位。たどり着いた場所の一歩先を、いつも目指していたい。