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ここにきて横浜FCは2連勝で5戦負けなし、J1自動昇格にも2ポイント差の4位につけている。
僕らのチームは良くも悪くも、雰囲気の妙な浮き沈みがない。それでも負けていたときは飛び交う言葉がネガティブな響きを帯びていたのが、心なしかポジティブなものが増えている。
残り数試合に2006年以来の昇格が懸かる。「ここで逃せばもったいない」と力が入り、特別なことをしようと思いがちだ。J1優勝やアジア王者を懸けた決戦もそうだろう。でも肝心なのは「特別なことをしない」ことじゃないかな。
横浜FCはリーグ大詰めの11月のホーム戦から、前泊を敢行している。前夜も試合の一部、そこから戦いは始まるんだ、と士気を高める意味合い。ブラジルではどんな小さいクラブにもこの前泊の文化がある。
こうして僕らが前夜を明かすのは広大な豪華ホテルで、食事会場がどこか分からず、迷ってしまった。朝食からしていつもとは違うから、「やっぱりいいホテルのパスタはうまいな」と朝から食べ過ぎちゃったり。
さらにこの終盤戦は特別ボーナスが出る。勝てば出場選手だけでなく全員にボーナス、ゴールならもうひと弾み。これがなかなかの額。……思い切り、特別なことをしちゃっているね。
試合に勝つとお金がもらえ、もう1つ勝てば倍に、と雪だるま式に報酬が膨らめば選手も「もっともっと」と上を目指すようになるのは事実。ただし決戦へのアプローチひとつをみても、これが正解と定まったものはない。緊張感をみなぎらせて臨み、勝てばその緊張感が「素晴らしい」と称賛されても、負ければ「むやみにピリピリしすぎた」となる。「ニンジン作戦様々だ」となるのか「ニンジン頼みしかできないのか」と評されるかは、結果次第でもあるからね。
そもそも決戦というのは変に気張らなくても自然と気が高ぶるもの。いつも以上に観客が入り、特別感が出て、ニンジンでなくとも力が入る。だから選手自身は特別に何かをしなくてもいいんです。心がけるのはいつも通りの、いい準備。
そのうえで集中力は途切らせず、心を研ぎ澄ます。僕もいつでも出場できるよう準備を尽くし、仲間たちの雰囲気に気を配り、出たならば何かしらの貢献を果たす。そうやって普段通り、自分を整えています。