BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2017年09月15日(金)掲載

“サッカー人として”
2017年09月15日(金)掲載

戦い方は進化したか

 陸上の桐生祥秀選手は100メートルを9秒台で走った126人目になるらしい。人類誕生の長い歴史でわずか130人足らず。世界で100メートルを走る選手が一体、何人にのぼるだろう? そう考えると、すごいよね。


 カール・ルイスが平地で9秒台を出してから30年余り。100分の数秒ほどでも日本記録を縮める一歩が、大変な進化なんだろう。


 サッカーはこの数十年で進化したかと聞かれると、どうなのかね。比較で語れるのは10年まで、かなあ。それ以上隔てると諸条件が違いすぎて。在りし日のスパイクは固い木靴にコルクのポイントをつけたような代物、ボールも天然革で重量級。あれらで今みたいにスプリントして無回転シュートを放つ……難しいよ。


 40年以上前のブラジルサッカーにはフィジカルトレーニングの発想はなく、純粋に「サッカー」を磨いていた。それゆえ育まれる魅力もあり、だから昔ながらのブラジル人はスピードと体力に頼む現代スタイルを「面白くない」という。相手の裏をかく、驚かせる、そんな技の見せ合いを好むからね。


 日本代表でいえば、ジーコやザッケローニ監督時代には主導権を握るスタイルを深め、戦術やメンバーもほぼ一貫していた。ハリルホジッチ監督は相手ごとにマイナーチェンジをしつつ勝とうとする。前者はワールドカップ(W杯)で自分たちのサッカーをやろうと挑み、できなかった。どちらが正しい、のでもない。勝てば正解、負ければ不正解とされるのが公式のようなこの世界で、議論は永遠に平行線をたどる。


 勝つためならスタイルは変えうる、それがいわゆるリアクション。アジアと世界で力の差があるとすれば、相手によって戦い方が違ってくるのも仕方ない。その意味では日本もリアクションも使いこなせた方がいいのかな、とオーストラリアに見事に対応してW杯出場を決めた試合から考えもした。相手に応じ、時に駆け引きもする。それがスタイルになる可能性もあるよね。


 確かなのは、監督の戦術を完全に実行できる水準の選手がいたこと。でなければリアクションさえできない。スタイルはどうであれ、それが日本のレベルということ。本大会で同じ試合のかたちになり、そこでもできるとしたら、それはそれで一つの成長、進化じゃないかな。