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横浜FCのJ1での挑戦が始まった。初戦は前年王者の浦和レッズに1-2で敗戦。僕は右足のケガもあって出場できなかったけれど、チームは狙い通りの戦い方を90分間貫いた。もちろん負けだから良かったとは言えない。それでも横浜FCのコンセプト、スピリットは示せた。
5万7000人を超える大観衆が後押ししてくれた面もある。ほとんどが浦和に対する声援でも、その熱い空気が敵地に乗り込んだ僕らの気持ちも高ぶらせてくれた。ただ、J2やその下の日本フットボールリーグ(JFL)のチームでも一度だけなら惜しい試合はできるだろう。周りの人はほめてくれるかもしれないけれど、大事なのは継続することだ。
今後の33試合、それほどお客さんが入らない試合でも同じスピリットで戦えるか。「まあいいや」という雰囲気が漂って、中だるみするとまずい。負けを他人のせいにしたりして、J2落ちの危機が来る。浦和戦で最初にグラウンドに入ったときの感動、心構えを忘れちゃいけない。
次節の相手は横浜F・マリノス。同じ街を本拠とするチームとのダービーマッチだ。僕はイタリア・ジェノア時代に、サンプドリアとのジェノバ・ダービーを戦った。4万人以上の観客が真っ二つに分かれて、ジェノアのチームカラーの赤・青と、サンプドリアの青にきれいに染まっていた。そのときの地面が揺れるような盛り上がりは、今まで僕が体験した中で一番のもの。その試合でイタリア初ゴールを奪えたのも、熱い雰囲気のおかげかもしれない。
2001年末、旅行でジェノバの空港を利用したときのこと。スーツケースに「ありがとう」と書かれた紙が張られていた。やられた、中の荷物を盗まれた……と思ったら「ダービーでゴールを決めてくれて」と続いていた。多分、空港職員が書いたんだろう。7年も前のことを覚えてくれていたことに感激したし、それだけダービーが人々の生活にとけ込んだ特別なものなんだと理解した。
横浜にもフリューゲルスとマリノスの合併という8年前の因縁がある。そんなグラウンド外の様々な思いも乗せて、ジェノバのように色鮮やかなダービーに育っていけばいいね。