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コンサドーレ札幌戦で出向いた函館で後輩にこんな話をした。「この北海道でゼロから立ち上げたクラブが、10年後、クラブワールドカップで活躍しているかもしれないよ」。
人口わずか33万人のアイスランドが欧州選手権で大国を倒して勝ち進む。8年前、まだ地域リーグの松本山雅へ移籍する仲間を「大変だろうな」と見送ったものだ。あれから松本はいつの間にか僕らを抜いてJ1へたどり着いた。今週、練習試合をしたブリオベッカ浦安は日本サッカーリーグ(JFL)、こっちはJ2。ひょっとするとこれも立場が逆転する日がくるのかも。横浜FCとしては心穏やかでないけれど、そんな夢を抱けることがサッカーの素晴らしさだと思う。
欧州選手権や南米選手権を見ていると、レベルの高さはもちろんのこと、選手の体からほとばしる誇りが羨ましくもあり、嫉妬に近いものさえ覚える。自らの存在をかけた激しさ、熱さ。僕も横浜FCも、もっと熱くならねばと思わずにいられない。
札幌戦当日。いつもの午前6時30分に起床してテレビを付けると、そこから動けなくなった。イタリア対ドイツがPK戦にさしかかっていた。僕はジェノアで過ごしただけにイタリアを応援してしまう。ただイタリア対ブラジルだったら、ブラジル側につく。日本対ブラジルなら、複雑ながらもブラジルに肩入れするね。
国として好きなのは断然、日本。でもサッカーでは常にブラジルが1番であってほしい。あの地に育ててもらい、30年たってもなお自分に息づく根本的なもの、サッカー人としての魂をブラジルはくれた。それが僕の誇りでもあるからだ。
南米の彼らは出稼ぎ先の欧州でどれだけ染まろうとも、南米へ帰れば自国のサッカーをやる。原点とするものに誇りと威信をかけ、余すところなく表現する。それが強さでもあるだろう。そうした誇りを僕は札幌戦で示せなかった。2-5と敗れていくまま、何もできなかった。ふがいない。じゃあ、どうする?
4戦続けて先発し、勝利した町田ゼルビア戦は自分たちが報われた気持ちになれた。「よし、次に行こう」。週初めも筋トレから晴れやかに臨めた。今週は同じ筋トレに「こんちきしょう」と思いをぶつけ、新たに週の幕が開く。喜びで迎える朝があれば、悔しさを抱えて迎える朝もある。そのどちらもサッカー人生。誇りも夢も、取り戻すには練習しかない。そこにしか僕の進む道はない。