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日本サッカーの父といわれ、17日(2015年9月17日)になくなったデットマール・クラマーさんに限らず、これまで多くの偉人が海外から日本へ新しいものをもたらしてくれた。僕の接した1人だとトルシエ元日本代表監督がいる。「フラット3」の戦術はもとより、一つ一つに理由があって、試合へと線でつなげていく一貫した練習。ホテルでの過ごし方一つさえ、すべてプレーにつながるのだと力説する熱血指導。新鮮で画期的だったものね。
オフト、ジーコ、オシム、ザッケローニ。実にいろんな国の指導者がタイミングよく、日本を発展へとつないでくれた。異なるものを取り入れて自分の形にしていくのが上手という、日本人の特性もあるんだろう。
サッカー人生でクラマーさんのような「師」は誰か1人というわけではなく、ブラジル時代からたくさんの人々に様々に教わっている。ただし言葉で伝えられたというよりは、自分の目で見て学んでいたね。優れた選手やリーダー、彼らに見よう見まねで近づこうと。
うらやむほど技術も才能もあるブラジルなのに、練習で飛び交うのはほぼ「根性」「やり切れ」に相当する精神論だった気がする。殊更に言葉にしなくても染みついているもので、試合が近づくにつれて強まり、敗北には心の底から悔しがり、言い争いもする。
それをこの目で学んだから、たとえリラックスを兼ねたミニゲームであっても僕は絶対に負けたくない。勝負事であれば、遊びのなかであっても勝たなければならないというのがブラジルであり、ことサッカーに関しては「まあ、いいや」で済ます感覚はない。その目線でいうと、負けないことへのこだわりで日本はまだまだ足りないよ。クラマーさんもよく「大和魂を見せてみろ」と語ったという。時代にかかわらず、通じるものがあるんだろうね。
クラマーさんが改革の風を吹き込んでから半世紀が過ぎた。Jリーグのレベルはクラマーさんたちの欧州にまだ追いつけない。でも、誇れるものもある。規律正しい運営、ホスピタリティ、サポーターの示す礼儀正しさや敬意。外へと発信していけるほど、しっかりしたものもある。
受け取ったものを吸収するとともに、伝え広めること。それがクラマーさんへの恩返しにもなるはずだから。