BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2015年06月05日(金)掲載

“サッカー人として”
2015年06月05日(金)掲載

W杯の光曇らせないで

 かつてJリーグクラブのあるGMが「バルセロナのようなチームを作りたい」とスペイン人に請うた。方法はあるという。「シャビとイニエスタを買ったらいい。あとメッシも」。確かに。でもそうすると年俸だけでも優に40億円近くかかっちゃう。


 理想のサッカーと勝つためのサッカーは違う、と監督の方たちはよく言う。そして理想を求めていけばカネもかかると。物事を創り上げるときにお金は大事で、何事もお金を集めないことには始まらない。ただお金が絡むと人間はどうも……。


 国際サッカー連盟(FIFA)の汚職事件に、妙に歯切れの悪い関係者は世界の各地にいるんじゃないかな。南米の誰それはカネに汚い――そんな噂は今に始まったものじゃない。以前に「不倫は文化」との発言が物議を醸したけれど、「賄賂は文化」であるかのように自分のポケットを膨らませる。人間の歴史をひもとけば、カネの絡む不正がなくなったためしはない。


 FIFAはフェアプレー精神を強く訴えてきた。であればいろいろな部分も公平にすべきだし、透明性も高めないとだめだろう。


 うちの次男坊が中学に上がって新たに少年団クラブチームに入ってね。つい最近まで反抗期だったのに、この数カ月でガラリと変わった。人との接し方、負けることの悔しさ、うまくなることや勝利の喜び。サッカーのコミュニティーが人間を育てる効果は大きいなと改めて思う。サッカーと関わるそうした場を、世界中に広げてきたのがFIFAだった。途上国にグラウンドを作り、協会やトレセンを設け、何よりもワールドカップ(W杯)という舞台を提供してきた。そこを目指し、サッカーで食べていくという希望を抱いて生きる子どもが、現実としている。あの舞台はすべてのサッカー人にとっての夢なんだ。


 今回の件がW杯という光まで曇らせるのであれば悲しい。2018年ロシアW杯をボイコットすべしとの声がイングランドなどで上がっている。モスクワ五輪で選手が犠牲になった無念を思い出す。W杯が国や地域同士の代理戦争の場とならないように願う。誘致を巡ってお金が飛び交ったとしても、W杯の一戦一戦に賭ける選手や代表チームの尊さや重みに、偽りは何もない。選手としてそのことは改めて言っておきたい。