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クロアチアのザグレブ時代、スペインの空港で昼食を食べたとき、クロアチアの同僚は店員がちょっとでも横柄だとすぐに怒った。自分たちが欧州のなかで見下されるような扱いは見過ごせない、といった敏感さだった。「あいつはセルビア出身。信用するな」。冗談のはずだけど、穏やかならない言葉もよく聞いた。
旧ユーゴスラビア圏の人々はそれぞれに民族としての誇りがある。そして選手はおしなべて技術が高い。ただサッカーを語るうえでは「旧ユーゴ圏の人だから、こうだ」とくくるより、その人単位でとらえた方がいい。日本代表のハリルホジッチ監督に対してもね。
サラエボ出身の元日本代表監督のオシムさんは初めて千葉にきたとき、事前情報は頭に入れずに練習をみたという。名前や年齢、実績なども一切取り払い、選手「そのもの」をみた。その眼力が優れていた、と。
僕もザグレブ入団前、チームに詳しくないまま練習を眺めてみた。若々しく俊敏なDFが目に付く。「こういう選手がこの先、ビッグクラブへ移るんだよな」。実際のところは、それはビッグクラブから戻ってきた当時37歳の選手で……。
でも彼が代表入りする力の持ち主だったのは事実だし、なまじ予備知識があれば「30歳以上=動きは鈍い」といった先入観に印象が左右されただろう。ちなみに足の速い選手が右サイドにいて、これは一目で若い選手と確信し、その通り19歳でした。それがいまのミキッチ選手。広島でみせているプレー、あのまんまです。
細かく指示されなくなることで伸び伸びと力を出す人、自由になりすぎるとうまくいかない人。監督が変わることで選手も変わるけど、事前情報や先入観が少ない新監督なだけに、どこにチャンスがあるか分からないよ。例えば横浜FCを経てJ1チームへたどり着いた選手たち。少し前はJ2中位のクラブにいた彼らだって、調子がいいときに監督が見に来ようものなら、代表に入っちゃうかもしれない。
昔、トルシエ元日本代表監督は神戸のあるCBを視察に行ったはずが、彼でなくて近くにいた海本慶治選手を代表に招集した。海本選手のことは知らなかったのに、その場で目に留まったから。
これまでとは違う評価と巡り合うかもしれないわけで、僕も気合が入ります。