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今年で48歳、プロ30年、おまけに年男であります。
僕がプロになったときは生まれていない選手がずいぶんになった。「あの監督、カズさんより年上ですか」「あいつはね、1つ下だね」「えっ、あいつ、ですか」など、一選手として僕と話すとショッキングなこともあるみたい。
30年やって見えてくるもの。よく聞かれるのだけど、皆さんが思うほどに僕自身は分かっていない。監督が務まるほどサッカーを知っているでしょと誤解されがちだけど、全く別物。選手ひと筋なのだから、技術や精神面ならともかく、戦術やチームマネジメントについてのアドバイスはうまくできません。頭で分かっているようで分かってない、体で知っているようで知っていないこと、まだまだあります。
それに現役の身としては監督というものを分かりすぎることが正しいとも思わない。ただこれだけ続けていると、監督の心情もよく分かるようになる。それも経験の1つではあるよね。
経験がもたらすものは、上下動が少なくなることじゃないかな。精神が安定してこそそうなる。どんな状況でも必ずすること、ルーティン。ベテランになればなるほどその何気ない一連の作業を、本番でも練習でも何でもない日でも、常にやっている。すなわちそれが安定であり経験であり。
若い頃は軽重をつけがちになる。「きょうは練習だから、このくらいでいいや」「この日は大事だから、やろう」。でもいざ「大事なとき」に「これをやろう」と思っても、常にやっていない人はできにくい。熟練者になりずっと同じことをやっているとブレが減って、どんなときでも変わらず、できるようなる。
30歳を過ぎてうまくなる選手がいる。某選手は20歳のころはひたすら足が速く、周りに使われるタイプだった。ベテランの域になってもまだまだ快足だったけれど、ただ走るだけでなく、自分が周りも生かすようになった。ドリブルも上達した気がした。考えることで、また伸びたんだね。
「若いね。元気だね」。最近、久しぶりに会う人によく言われる。顔が若いわけじゃなく、ハツラツ感やエネルギーを見た目からパッと感じてくれるんだろう。たわいない話をしているときでも、エネルギーがふつふつと。そんな30年目になればうれしいです。