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原因不明の痛みがいつ消えるのか、先の見えないまま別メニューを続けて3カ月近くになる。「試合のピッチに立つぞ」。この意欲だけで僕は動いている気がするよ。
雨に打たれながら独りの闘い。ダッシュ、ターン、200メートル走って40秒のインターバル。延々と繰り返す。きつい。息が上がって限界だ。痛めた箇所も切れそう。そんなとき、つぶやきながら僕は走っている。「試合に出る。出るんだ」「痛くない、痛くない。痛みなんて気のせいだ」……。
ワールドカップ(W杯)代表入りした欧州組のハセ(長谷部誠選手)や吉田麻也選手も、大会前の大けがや手術で似たような不安と戦ってきたのだろう。ハセとは3月ころ食事を共にした。お互いリハビリ中の身だったので、僕の自宅で。
「やれるに決まってるよ、絶対」「ぶっつけ本番でも、絶対大丈夫だ」。根拠を問われても困るけど、ハセにはそう繰り返した。「1994年W杯でイタリア代表DFバレージは第2戦で半月板を損傷し、手術し、でも決勝に出ているんだ」。決勝に戻ったバレージは延長戦まで戦い、PK戦でPKまで蹴っちゃった。MVPだといっていい。
香川真司選手や本田圭佑選手が所属先で出番が少なかった、と危惧する声がある。心配ないよ。2人は休んでいたわけじゃない。世界的な名門のクラブで高いレベルの選手と日々練習し、定位置を争っていたわけで。出ないよりも出られた方がいい。でも、出てないからといって即「ダメ」でもない。ものは考えようなんです。「すべてをプラスに変えていけばいい」。本田選手が語った通りだよ。自分ができたことは次につなげられるし、できなかったことも、次へ生かすことはできる。
日本が初出場した1998年W杯、対戦したアルゼンチンとは技術・経験ともにものすごい開きがあった。でも結果だけ見れば0-1だ。小さくも大きい1点差なのだけど、たとえ力の差があってもサッカーはどうなるか分からない。今大会もブラジルだって1次リーグ敗退の可能性はある。日本が3連勝してもおかしくないし、3連敗でも驚かない。
だから「大丈夫」と言い聞かせ、自分を信じ込ませるのも大事なんだ。見限らずに信じることが力となる局面があるからだ。繰り返します。大丈夫です。代表の欧州組がもう一度輝くのも、僕が再びピッチに立つのも。