©Hattrick
ワールドカップ(W杯)や代表選考になると必ずテレビで流れるシーン。「外れるのはカズ。三浦カズ」というあの名文句。誰かが選ばれ、誰かは切られる。今回(2012年)のオリンピック代表でいえば、アジア予選ではメンバーだった大迫勇也選手(鹿島アントラーズ)らが選に漏れた。
悔しくないわけがない。でも彼は鹿島という日本サッカーを引っ張ってきた名門でエースとして頑張っている。プレーには知性も将来性もある。今回はたまたま選ばれなかっただけ、と受け取ったらどうだろう。世界を見渡せば、23歳以下による五輪に出場してはいないけどトップクラス、という選手は大勢いるよ。
見返すという言葉は僕は好きじゃない。どこか未練がましい。だから見返すのでも反省するのでもなく、何が足りなかったのかを、自分が前向きになるためにみつめる。自分のために悔しさをバネにしてほしい。
もしかしたらこれはチャンスかもしれないよ。五輪の期間中に大迫選手がJリーグでゴールを連発すれば、9月のW杯予選に呼ばれるかもしれない。自分で頑張って結果を出せば、次の2014年W杯に出るチャンスだってある。そうならないと断言できる理由はない。目標が目の前にあるんだ。鹿島を優勝に導くくらいに活躍して、1センチでも前に進んでいけばいい。
そもそも僕らは、毎週毎週、選抜されている。週のたびに優劣をつけられ、毎日毎日ふるいにかけられて。でもそこに一喜一憂しないこと。五輪代表監督に成績を出す責任、18人を選ぶ責任があるなら、大迫選手や僕らにはグラウンドの上で全力を尽くす責任がある。
あの1998年、僕は帰国した空港から直行して練習に出た。気が紛れるのもあったけど、やっぱりそこで落ち込んでいるヒマはないと思った。外れたからといってサッカーを取り上げられたわけじゃない。サッカーをやめろと宣告されたわけでもない。今週末も試合はあり、落選したその日だってサッカーはできる。
W杯を頂上とみれば、オリンピックは通過点ともいえるだろう。通過点……。僕はいま45歳でプレーし続けているけど、どんなことがあっても、どんな場所であれ、すべてが僕には通過点です。今のこの瞬間も通過点と思える。それは終着駅のない旅。「ここでいい」という地点はないんだ。