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ブラジルのメディアはとても手荒くて、試合前にチームが前泊するホテルへ平気で電話をかけてくる。なぜだかフロントもそれを選手の部屋へつなぐんだね。「もしもし」と応じたら、そこからラジオの生中継へとつながれている。さすがに今は変わりましたけど。
海外でプレーすればマスコミの目は日本より断然厳しく、日本にいるとき以上に激しいポジション争いを強いられる。代表では毎試合出ているようにみえる長谷部誠選手(ウォルフスブルク)だって、ドイツではSBもやり、45分で交代もさせられる。毎日毎日が勝負であって、保証はどこにもない。長友佑都選手(インテル・ミラノ)も定位置争いの厳しさはさることながら、浴びているファンやメディアの罵声がおそらく世界トップクラス。そこをくぐり抜けている彼らの経験が日本代表にどれだけ大きいか、ワールドカップ(W杯)最終予選3連戦ですごく感じることができた。
チームが負ければ「あいつが点を取らないから」と決めつけられる選手がいる。でも、だからその選手はエースであり中心なんだ。簡単に背負わされるのも選手に格があればこそで、そこが選手のすべてとも思う。
マンチェスター・ユナイテッドに移籍する香川真司選手にも日本から大きな期待とプレッシャーがかかるのだろう。でもあそこは全員がそういった特別な選手。香川選手だけが特別なわけじゃない。それにユナイテッドほどの名門となれば、余計な重圧から選手を遠ざけ、本来の力が出るように環境を整えてくれる。
「香川選手は代表よりドイツでプレーするときの方が光る」とよく耳にする。それは周囲が違うから。ドルトムントでは彼の周りをポーランド3人衆が固めていた。見る限り、あの3選手は世界レベルだと思う。だから香川選手のもらいたいタイミングでパスが出てくるものね。
サッカーは「合わせる」スポーツ。周囲が自分に合わせてくれる「中心」になれれば、代表でもユナイテッドでもうまくやれる。中心でやれるということが、どれだけ楽なことか。そうはさせてもらえないから、ビッグクラブでは苦しむんだ。
だから今度会うとき伝えておきます。「中心になるまでが大変なんだ」って。