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重圧やプレッシャーは目に見えないだけに、克服するのはなかなか難しい。先日、浦和レッズでリーグデビューを果たした18歳の選手が55分のあたりで足をつっているのを見た。横浜FCで今季初先発した18歳の選手もその時間帯に「つりそうだった」という。僕もそうで、18歳で迎えたブラジルでのデビュー戦は55分過ぎに足がけいれんしている。過剰に緊張していたんだろうね。次の試合からは、足なんてつらないんだから。
ここで成功しないと食いっぱぐれる――。ブラジルのころからそんな危機感で自分を追い込んできた。個人的には重圧はないよりもあった方がいい。重圧のかからない状況でも「ここで自分を試す」と自分で自分に重圧をかけたしね。気合を前面に押し立てて、成功したときも力みすぎたときもあるけれど。
いまだに先発に入ると興奮してくる。でも今は抑えなければと落ち着き払う自分もいて、ふっと力が抜けるというか。いい高ぶり、責任感、リラックス。微妙なバランスで保たれているのがいいときで、リラックスだけでもダメなんだ。
重圧を和らげる助言も難しいけど、こういう言葉ならかけられると思う。「日ごろ君がやってきたことが良くて、君は今日出場しているわけだから、自分のいいところを出すことだけ考えればいい。恐れるな」。FWの僕もDFの先輩たちに言われて楽になったものね。「カズ、どんどんいけ。お前がミスしても後ろで俺たちがカバーしてやる」。
若い人は練習でいい結果を出せても、本番で出せないときがあるかもしれない。一流の選手になると本番で切羽詰まったときの方が結果が出ちゃう。僕も練習でできて試合でできないころがあったけど、面白いものでいつしか「逆」になった。どこで力を出す、抜くかを、経験を重ねるとともに覚えていく。大きな舞台になるほど力が出ている。
あのペレですら「点を取れるだろうか」と毎試合不安だったという。不安や人の心は目に見える形がない。見えないものをつかむのが、一番難しい。
だけど、人間は見えないものをつかむために生きている気もする。「なんで俺、こんなにやるの?」。答えは見えない。5年たてば見えるか。60歳までプレーしたって見えないでしょう。たぶん人生は見えないものと常に向き合い続ける。でも、だから面白いんだ。