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選手生活を引退したら、どんな第二の人生を送るのか。正直に告白すると、今は何も考えていない。サッカーの指導者や経営者になった自分の姿を想像することもあるけれど、困ったことに、やりたいことが何も思い浮かばなくて。ずっと現役でプレーしていたいというのが本音なんだ。
自分が監督に向いているとは思わない。例えばスタンドから試合を見ても、どの選手の運動量が落ちているだとか、チームのどこをいじれば良くなるかというのがイマイチわからない。
多分、それは僕が基本的に意識を自分に向けてプレーしているから。相手うんぬんよりも、自分が何をできるのか。相手DFの特長を頭に入れておくこともない。味方の動きやポジショニングに注文をつけることもない。もちろん頭を使って考えながらプレーはするけれど、考える部分と本能的な部分をうまく組み合わせることが大事だ。
その点、若いころはもう本能だけ。チームのバランスなんてお構いなしで、ドリブルでガンガン勝負。右に行きたいときは右へ、ボールが欲しければ下がってパスを受ける。試合前のミーティングも一応聞いてはいたけれど、試合が始まれば頭の中には残ってない。だから日本代表のオフト監督やファルカン監督がどんな話をしていたか、どんな戦術だったか聞かれてもさっぱり思い出せなくて。
FWにはそういう強引さも必要なんだ。本能のままにぶっ飛んでいくような無鉄砲さ。2トップの場合、そんな一直線な選手と周りのバランスを考える選手のコンビがいい。
今では僕もバランスをとる側だ。監督の指示もしっかり頭に入れる。ボールがないときにもじっと我慢して、守備でリズムをつくる。ちょうど野球の投手が失点をしても5、6回まで投げて試合をつくるようなイメージ。体力も衰えてくるし、若い人の力を借りて自分をもっと生かす。元イタリア代表のロベルト・バッジョを参考にしつつ、自分のプレースタイルでチームに貢献したい。
ただ、ひょっとすると、今はバランスを気にしすぎているのかもしれない。ボールをよこせ、オレが切りひらくんだ、という20代のころの気持ち。時にはそんなやんちゃな部分をちょっぴりのぞかせてみようか。