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朴智星(パクチソン)選手(マンチェスター・ユナイテッド)が呼びかけた15日(2011年6月15日)のベトナムでの慈善試合に参加するまで、いろいろ考えた。智星の厚意、大会の趣旨に協力できることがまず、喜ばしい。でも一番大きい理由は「刺激」なんだ。世界のトップ中のトップ、欧州チャンピオンズリーグ決勝に現役で出場している智星に加え、韓国や日本からも欧州で活躍している選手が集う。そんな人たちと一緒にプレーしてみたい、と刺激を求める心だね。
5時間半の移動をへて試合をすれば、どこかで体はひずむ。リーグ戦の次戦に先発できなくなるリスクもある。しかしそこは精神力で乗り越えたいし、ケガをするなら所詮、そこまでの選手。この挑戦から得る刺激が、僕の「次」に生かせるはずだと経験がささやいている。だから僕はベトナムへ行ったんだ。
世界へ飛び出し、生き抜く人間がまとう空気というものがある。それに触れ、生の声を聞くのは貴重なことだ。東日本大震災の慈善試合。長友佑都選手(インテル・ミラノ)にせよ長谷部誠選手(ウォルフスブルク)にせよ、彼らが漂わせる力をあの時、僕はもらっている。若々しく、生き生きと躍動する生命力。そして彼らも「カズさんから何かをもらった」と言ってくれる。
刺激は疲労を上回る。いつもそうだった。ヴェルディ川崎時代の1996年、世界選抜対ブラジル代表の試合に招かれた。レオン監督は「行って刺激を受けてこい」と送りだしてくれた。「で、すぐ帰ってこい」と付け加えて。ニューヨークで一戦交えた僕は、とんぼ返りでキャンプ地の鹿児島・指宿へ。でも胸に残ったのは疲労より、マテウス(ドイツ)らの放つすごみなんだ。
クロアチアのザグレブ在籍時に、パパン(フランス)の引退試合に出場すると、現役のマルディーニ(イタリア)らもリーグ戦のさなかにマルセイユへ駆けつけた。チャーター機を用意したのはパパンがかつて身を置いたACミラン。クラブに貢献したパパンという人物へのリスペクトがそこにはある。マルディーニは全力プレーでパパンへの敬意を示していた。疲れを超えるものを感じながら。
智星は「カズさんとサッカーするのも最後でしょうから」と言ったみたい。反論しておきました。「最後、ってどっち?」。僕ならまだまだ大丈夫ですから。