BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2008年06月06日(金)掲載

“サッカー人として”
2008年06月06日(金)掲載

ブランクを埋めるもの

 今週末のエキシビジョンマッチでヒデ(中田英寿)が2年ぶりに国内でプレーを披露する。現役復帰を望む声は多いけれど、サッカー選手がブランクを埋めるのは簡単じゃない。ケガで3週間休んだだけでも、戻ってすぐに試合はできないくらいなんだから。


 テニスでクルム伊達公子さんが12年ぶりに復帰し、いきなりシングルスで準優勝した。37歳で日本ランキング上位と戦うのは大変なこと。何よりもう一度やろうと決めた勇気が素晴らしい。厳しい練習を積んだのは間違いない。引退を決めたときにはメンタルが疲れていた部分もあったはずで、復帰には相当なエネルギーが必要だっただろう。


 でもサッカーの場合、長いブランクの後で第一線に戻るのは、さすがに無理なんじゃないかと思う。一人でどれだけ走ってボールをけっていても、ミニゲームを何回繰り返しても、11対11の実戦の動きとは全然違う。何十試合とゲームをこなす中での疲労の回復力やケガの可能性を考えても、35歳を過ぎてからの現役復帰は難しいだろう。


 でも1試合限定となると話は別。僕がブラジルにいた20年前に読売クラブ(現東京ヴェルディ)がブラジルに来て、元ブラジル代表を集めたマスターズと試合をした。僕もテレビ中継を見ていたけれど、結果は0-3の完敗。日本リーグ王者の読売が、引退から何年もたったリベリーノたちに歯が立たなかった。


 当時26歳だった左サイドバックの都並(敏史)さんは、40歳過ぎの右ウイングのカフリンガにぶっちぎられたことを今でも覚えているそうだ。サッカーは1+1が2になるとは限らないスポーツで、単に足が速いとか体力があるだけでは勝敗が決まらない。経験を生かし、チームとして調和がとれていれば勝てるものなんだ。


 ヒデはまだ31歳だし、今からでもトップレベルで十分やれるはず。でも本人に練習での調子を聞くと、いつも「まだまだです」と返ってくる。20代半ばのベストな自分をイメージして、そこに戻そうとトレーニングしているから「まだまだ」と思うんだね。


 この先、ヒデがプロの世界に戻ってくることはないだろう。それでも、チャリティーマッチなどでプレーする機会はあるはず。また一緒にボールがけれたら、きっと楽しいだろうな。