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言っておきますが、僕はサッカー界のご意見番じゃないですからね。何かあるごとに、皆さん見解を聞きにきてくれますけれども。
そう断ったうえで言いますと、日本代表がワールドカップ(W杯)予選でアラブ首長国連邦の地で初めて勝ち、ホームでタイにも勝った、この2勝は言うまでもなく大きい。ハリルホジッチ監督も3年目、いろんなことを自分のなかで消化されたんじゃないかな。最初は自分の基本哲学を押し立てていただろう。でも日本ならではの考え方や文化の違いに戸惑ったと思う。そこで「日本はこうだから」という周りの意見や声を聞き入れたようにみえるんだ。日本の選手を見る目、接し方などについてね。
そして昨年のサウジアラビア戦あたりから一つの形ができた。それまではザッケローニ元監督のサッカーの残像もあった。魅力的なスタイルだったし、壊すことに抵抗感のある選手もいただろう。そこに折り合いをつけ、いい意味で破り、新しいもので内容と結果を伴い「これなら」と手応えをつかんだ。「今、代表、いいですよ」。3月の連戦前に長谷部誠選手は言っていた。以前の不安は拭えていたよ。
タイ戦、香川真司選手のゴールは自分のことのようにうれしかった。見逃せないのは、岡崎慎司選手がニアに突っ込んでいて、DFがつられてマークがずれ、カバーしようと相手が動いてポンとスペースが空いたこと。あれこそ連動だね。
内容も結果も伴う試合など、なかなかない。逆にいえば、悪いときに勝てるならあなたは強い。タイ戦は4-3でもおかしくない内容なんだけど、不思議に4-0で終わっている。それが「本当の強さ」でしょう。
最近の風潮にある、決めつけは良くないね。「試合に出ていないのに代表に呼ばれるのはおかしい」はおかしい。本田圭佑選手はミラノでボーッとしているわけでないから。僕もイタリアにいたから分かるけど、見られる目の厳しさは日本の比じゃなく、練習と競争の厳しさ自体が違うわけで。「試合勘」なるものは確かにある。でも思うに、代表の試合に関しては別物だよ。代表戦でうまくいかない場合があるとしても、それは試合に出ていない過程というより、試合自体の中に問題の核心があるはず。
GK川島永嗣選手があれだけ輝いた日には「クラブで出てないのに……」という議論、しぼむでしょ。ずぬけたGK、ずぬけたFWを擁するチームこそハイレベルだとも気づかされた。現代サッカーは中盤ではもうそれほど差が出ない、両ペナルティーエリアで決めるか、止めるかが差を分けるという見方もあるしね。
……と、僕は評論家じゃないからね。先日も「プロ32年間で一番苦しかったのは」と総括を求められたけど。何が苦しかったって? そりゃあ昨日、今日の練習のきついランですよ。