BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2012年05月11日(金)掲載

“サッカー人として”
2012年05月11日(金)掲載

三歩進んで二歩下がる

 一口に監督と言ってもいろいろなタイプがある。自分で選手を動かしたがる人。「やるのはお前たちだ」と放任する人。技術で鳴らした選手が、監督になると逆にパワー前面のスタイルをとるなんてこともある。


 横浜FCの山口素弘監督は現役のときの印象「そのまま」。みんなが思い浮かべる「ボランチのモト」のプレースタイル・考えを、そのまま指導にも広げているというか。仮に選手のプレーが成功と失敗とに分けられるとしても、単に結果論で問うことはあまりない。結果に至った状況、全体像を踏まえて良い・悪いを判断している。そこが分かりやすいから、こちら側もやりやすい。


 山口監督のもと、僕は3試合先発。でも終盤32分間出たときも、最後の13分間だったときも、残り1分だけのときもある。出ない試合もある。選手だからもっと出場したいのはやまやまだけど、自分の使われ方が決められていないということはいいことなんだ。本当の意味で競争させてくれている。だから期待もできる。


 状態が良ければ19歳でもパッと使う。45歳の僕も使う。中心選手も体調が落ちたとみれば外している。外国人も、練習でふて腐れるようであれば使わない。そこがハッキリしている。だから妙な話、出られなくても納得ができる。出られない選手たちの愚痴も不思議と少ない気がするしね。


 新監督になって次戦で10試合目。勝ちもあれば負けもあった。早々と結果が出れば一番いいし、監督も乗っていけるだろう。でも時間をかけて基礎を築き、だんだんと強くなる方が、のちのちクラブのためになるとも感じる。勝ちながら内容を良くしていかねばならない僕らの作業は、三歩進んで二歩下がる。前進しているのかどうか分かりづらい歩みでも、100試合積み重ねれば百歩進めるわけだから。


 どんなに「いいこと」をしていても、勝てないままだと違う方向へ向かわざるを得ないのがプロチームだ。練習も理想も「変えなきゃ」という空気が自然にできてしまい、何が良いのか悪いのかも、見えなくなっていく。


 自分たちがいいことをやっていると感じる今だから、勝負で勝たねばならないのだと強く思う。良い・悪い、最終的な答えは僕には分からない。でも良くなる可能性の感触を消さないためにも、成績を残していきたい。